開高健記念会

茅ヶ崎市 開高健記念館「開高健の釣魚大全」

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企画展:開高健の釣魚大全

書き綴る

釣師というものは、見たところ、のんきそうだが、実は脱走者で脱獄者だ。仕事から、世間から、家庭から脱出しようとあがきながら、結局、脱出できないことを知って、瞬間の脱獄気分を楽しんでいる囚人だ。

―林房雄『緑の地平線』―

● 釣りと文学

……きた!

と知って夢中でもがくうち、これではいけないと気がついて凝視の眼をすえると、もうそれは消えていて、私はふるえ、魚は足もとによこたわって吐息をついている。

―『脱獄囚の遊び』―

多種多様な歳月をかけた経験、そこから分泌されるものと独特の天与から分泌されるものがブレンドされてできるカン、そこへ左派と右派の闘争や女にふられた恨みや食いはずれた御馳走などにひそむのとおなじたぐいの根のしぶとさ、こうしたものの絶妙なからみあいのなかから“ツキ”という不思議は呼びよせることができる。

―『ツキの構造』完本・私の釣魚大全―

「私は挑戦し、征服するが、殺さない。支配しない。そういうことには興味がないのです」

この大将軍風の、マッカーサーあたりがいいだしそうな大見栄には、魚を逃がしてやるときの私の気持の何かがハッキリとでているように思える。日本語でもっと巧緻に表現するよりは、この拙劣のほうが、かえって真実をつたえているようにおもえるのである。

―『フィッシュ・オン』アイスランド―

美食の世界にブリア・サヴァランがいて、釣界にアイザック・ウォルトンがいる。彼は十七世紀に『釣魚大全』を書いた。……

あらためてこの本を読みかえしてみて、十七世紀のイギリスの川にすでに禁漁期が設けられていることを知り、愕然とした。三百年も昔にすでにイギリス人たちは自然の滅亡を憂慮して措置をとっていたのである。

―『私の釣魚大全』まずミミズを釣ること―

いつ頃からか一つの噂さを聞き、それが広大で孤独な光景としてこころに刷りこまれて消しようがなくなっている。いつ、どこで、誰から聞かされたのか。その点はおぼろになってしまったのだが、光景とその質だけは鮮明に、小さく輝いているのである。……

―『白いページ』―

『もっと遠く!』『もっと広く』 朝日新聞社 1981(昭和56)年
『オーパ!』 集英社 1978(昭和53)年
『オーパ、オーパ!! 海よ、巨大な怪物よ』  集英社 1983(昭和58)年
『オーパ、オーパ!! 扁舟にて』 集英社 1985(昭和60)年
『オーパ、オーパ!! 王様と私』 集英社 1987(昭和62)年
『オーパ、オーパ!! 国境の南』 集英社 1989(平成元)年

● 釣人として環境を考える

湖畔にはスモッグもなければ農薬もなく、水は水の味がし、木は木であり、雨は雨であった。

―『白いページ』飲む―

ここではすべてがそれぞれの位置にあり、それぞれの質を持っている。水は水の味がし、ヤマウドはヤマウドの味がする。……雨のあとではいっさいの物音が吸いつくされて、広い盆地には廃墟の静寂がたちこめる。北之岐川だけが潅木林のかなたで鼓動をうちつづける。夜ふけに周辺の峰から峰へと風がわたっていくときには、まるで冬の凩が全精力をあげて突進するような音が落ちてくるのである。その音を聞きながらランプの灯を眺め、私は何もできないでいた。ただすわりこんでタバコをふかしたり、焼酎をすすったりしているだけであった。

『フィッシュ・オン』日本

「奥只見の魚を育てる会」設立(1975年) 開高健が会長に就任。現在も永久会長。  設立時に作られた絵葉書(撮影 秋月岩魚)。

絵葉書に寄せられた開高健の原稿

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