開高健記念会

茅ヶ崎市 開高健記念館「開高健『一言半句の戦場』」

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企画展:開高健『一言半句の戦場』

一言半句のスタイル

私はね、もう二五、六年ネクタイを締めたことがない。するのは葬式の時だけ。私が好きなのは、シンプルライフ。強いて言うなら、深みのある単純さが欲しいですな。無味の味ってのは、なかなかできない。爛熟を通過しなければ出てこない。日本の男の服の装いは、まだまだ爛熟を通過していない。その一方、男の和服は、さすがみごとに爛熟を通過している。縹(はなだ)色ってのはいい色だね。イギリスのネービーブルーもいい色と思う。

(1982年(昭和57年)3月5日「MRハイファッション」)

釣りの一言半句

サムエル・ジョンソン博士が言うように「釣りとは、竿の先端に糸があって魚がくっついていて、竿の端っこにバカがついている状態だ」ということなんですよ。

1984年(昭和59年)2月10日「BE-PAL」

巨魚用の釣りのしかけ


佐々木英松画伯の魚拓

ドラドがルアーに引っかかって大ジャンプをして、黄金の水しぶきをあげるという燦爛)たる光景に出会って、私はこの一瞬のために地球を半周してきたのだなあという感じに襲われました(笑)。わが貧困なる生涯の中での幸せな一瞬のひとつです(笑)。

1981年(昭和56年)8月20日「朝日新聞」

たった一つの挨拶。

Keep tip high!

(竿先をピンと高く、という意味。イザ出撃の朝早く、釣師が別れあうときにかけあう挨拶。魚が釣れることを祈るという気味をこめて。なおこれには背後にもう一つの意味がかくされている。“竿先”から連想されよ。オトコならピンとわかるはず)。

では。

Here we go!

1985年(昭和60年)2月1日「Winds」

ファッションについて

わたしのウェアの中で一貫性をもっていて長年にわたっているのはバーバリーしかない。親父が中学校1年生のときに死んだの、だからネクタイの結び方もオーバーの着方もなんにも教わっていない。親父の感覚、わたしにないの。その親父が残していったものがバーバリーのレインコートだった。それで、レインコートはバーバリーと。

1982年(昭和57年)4月20日「BROCHURE」

「覚えてます。写真の仮縫いしているのが、このカシミアの上下。開高先生のファッションは独特で、ちょっと違うっていうか……。先生は英国紳士風というスタイルがあったと思うけれど、基本的にはアウトドアというか、シンプルにしたい方。で、撮影は逆に都会的に、あかるく、爽やかな色を心がけていました。意識して、ゆったり目のものを持っていくようにしてましたが、注文をおっしゃったことはありません。お持ちする服を楽しんで着ていらしたと思います。撮影時以外では、オシャレは自分で、というのがあったと思います。

アスコットタイを着けるのも早かったし、帽子もたくさん持っていてよく被ってたし、独特のこだわりをお持ちでした。このカシミアの上下の裏地も、先生は赤にこだわってらしたし……。あの裏地へのこだわりはどこから来ているのでしょう。羽織の裏地に凝るというのは、日本には伝統的にありましたけど……。謎は解けませんね」

(「風に訊け」連載時のスタイリスト久須美史子氏 談)

クリスタルのシビン

ぶどう酒を女にたとえて品評するのが国際的慣習の一つになっているようである。――中略―― ツッパッてる処女をコナレた熟女にするのにはデカンターかカラフを 使うが、小生はもっぱらシビンを使う。外見は異様だけれど、機能は立派。(目盛りもついてるしネ……)

あるところで実物を見せて一席のオソマツ(講演)をし、シビンから ワインを飲んでみせたところ、一人の紳士が感動し、偏見にとらわれない点がいいと、おほめ下さった。聞けばこの人は佐々木硝子という有名な会社の社長さんであった。そしてこの人はワイン通でもある。

しばらくしてこの人から特製のクリスタルのシビンを頂いた。ちょっとユーモラスな線を出しているのが心憎い。それ以来、ボルドーもブルゴーニュもすべてこのシビンでデカンタージュして来客に試供することとなった。好評。また、好評である。一度、お試しを。

1984年(昭和59年)4月2日「朝日新聞」

わが青春期 第二の青春

独身をたのしんでいるように見える青年や紳士を見ると、うらやましさで、ムカムカしてくることがある。もし、いま、オレが独身だったら何をしようと考えはじめると、ワクワクしてきて、しばらく時間がたつのを忘れてしまう。また、過去をふりかえってみて、アレをするのじゃなかった、コレをするのじゃなかったと指折りかぞえ、それを独身にむすびつけて、アレをしよう、コレをしようと考えはじめると、恍惚となってくるのである。

1969年(昭和44年)2月1日「アサヒ芸能問題小説」

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