「開高健、茅ヶ崎に棲む―マエストロの仕事場」
会期:2016年10月1日(土)~2017年3月26日(日)
開館日:毎週、金・土・日・祝祭日
観覧料:200円(茅ヶ崎ゆかりの人物館との共通観覧料300円)
1974年12月、茅ヶ崎市東海岸南に仕事場は完成しました。
烏帽子岩の向こうに初日の出を拝み、書斎から松林を眺め、週に2回は水泳教室に通い、帰りはラチエン通りのなじみの店に立ち寄りました。
茅ヶ崎の自然や人々に深く接しながら、開高健は数多くの作品を生み出してきました。書斎におかれていた原稿用紙、愛用の万年筆やパイプ、釣り道具の数々、愛読書、1週間の予定を記した自筆のメモなど、貴重な品々を展示しながら、開高健がいかに茅ヶ崎を愛し、どのような日々を過ごしてきたか、その一端を紹介します。
茅ヶ崎の開高健記念館で、記念会のメンバーが館内のご案内をする催し「ギャラリートークの日」(毎月最終日曜日開催)。
今月は開催が10月23日(日)午後2時からに変更になります。
案内人は、永山義高(開高健記念会理事長)です。
家族へ、友人へ、文壇関係者へ、開高健が綴る手紙は、もう一つの開高文学と呼べるほど実に魅力的な表現にあふれています。今回は、いくつかの手紙を取り上げながら、その魅力を探っていきます。
【日時】9月25日(日)午後2時から
【案内人】坪松博之(開高健記念会理事)
【略歴】1960年生まれ。サントリー㈱に入社。広報部で「サントリークォータリー」の編集を担当する。開高健からは「モテまっちゃん」と呼ばれ、茅ヶ崎の開高宅に通う日々を続けた。著書に『壽屋コピーライター開高健』ほか。
9月30日(金)は、展示替えのため、茅ヶ崎の開高健記念館を臨時休館いたします。
ご迷惑をおかけしますがご了承のほど、よろしくお願いいたします。
語り手◆常見 忠(開高健友人、日本のルアーフィッシングの草分け 1930-2011)◆
●ひと味もふた味も違う
いまルアーフィッシングとフライフィッシングが日本でも流行っていますが、この二つに関してはいわゆるその魚が持っている──なんというか触覚とか臭覚とか味覚とか含め魚の五感では感知できないものを持っているらしくて、その違いを探知することができるらしいのですが、そのへんをかいくぐって釣ることに意味があり、そこがまたおもしろいわけですよ。そうやって味も匂いもしないものに食いつかせるところに醍醐味があるというか、まあ私がやってるから言うわけじゃないんですけど、やはり生き餌で釣るのとではひと味もふた味も違うんです。開高さんもよく言っていました。魚が好きな餌を選んで釣るなら釣れるのが当たり前だと。
●釣り方と種類にこだわる日本人
もちろん渓流のヤマメやイワナ、あるいは鮎やヘラブナなどの餌釣りにだっていろんな釣り方があるし、奥の深いところもありますよ。それから海なら磯釣りもあるし船釣りもある。そういうものをすべて含めて、これは日本人の血というのか、私がつくづく思うのは日本人の場合、なんかすごく釣り方にこだわること。と同時に魚の種類にもこだわるんです。これはちょっと世界でも特異な現象じゃないでしょうか。
例えば自分の好きな魚に異常なほど入れ込んで、どんどん専門的な釣りをするようになっていっちゃう。一つの魚にこだわりだすともう他の魚に目がいかなくなって、鮎の友釣りをやりだすと友釣りしかやらない。ヘラブナをやる人はヘラブナしかやらないとか、磯釣りで石鯛しか釣らないとか、もうこれは日本人の民族性じゃないかと私は思うんです。
●マスターアングラーは世界へ出ていかざるを得ない
もちろん開高さんも私も釣り方にも魚にもそれなりにこだわっていますけど、ルアーとフライフィッシングには常に世界中に棲んでいる魚を釣ろうとする姿勢がある。そういう意味では日本という小さな国のなかだけで、こぢんまりとやる鮎の友釣りとも、渓流のヤマメ釣りともちょっと違うものだと思うんです。開高さんの場合、釣り方や魚にこだわっていながら、それでも多くの種類の魚を実際釣ってきましたからね。開高さんが最もこだわったのは大物釣りで、マスターアングラーというのか大物釣り師というか、とにかく大物しか念頭にない。これはもう徹底してましたし、だから世界中に出ていかざるを得なかったとも言えるわけです。
(『ごぞんじ開高健 開高健記念会〈紅茶会〉講演集Ⅰ』 常見忠 「釣り師・開高健さんとわたし」より)
茅ヶ崎の開高健記念館で、記念会のメンバーが館内のご案内をする催し「ギャラリートークの日」。8月はお休みをいただきます。
次回は9月25日(日)を予定しております。
家族へ、友人へ、文壇関係者へ、開高健が綴る手紙は、もう一つの開高文学と呼べるほど実に魅力的な表現にあふれています。今回は、いくつかの手紙を取り上げながら、その魅力を探っていきます。
【日時】7月31日(日)午後2時から(30分程度です)
【案内人】坪松博之(開高健記念会理事)
【略歴】1960年生まれ。サントリー㈱に入社。広報部で「サントリークォータリー」の編集を担当する。開高健からは「モテまっちゃん」と呼ばれ、茅ヶ崎の開高宅に通う日々を続けた。著書に『壽屋コピーライター開高健』ほか。
*8月のギャラリートークはお休みさせていただきます。

『食べ物語る BUNDANレシピ』(写真右)
日本近代文学館のなかに文学カフェを運営するクリエイティブ集団が企画した文学と料理のレシピ本。漱石、百閒といった大御所から、角田光代、沢木耕太郎、いとうせいこうといった現代作家まで3章、34人、34レシピ。開高作品では『輝ける闇』から前線基地の「ヴァージニア風フライドチキンとマカロニサラダ」が採られています。(主婦の友社 本体1600円)
『本なんて! 作家と本をめぐる52話』(写真中右)
作家が「本」をめぐって書いたエッセイを集めたアンソロジー本。これまでこのコンセプトで編まれたアンソロジーはいくつもありましたが、芥川龍之介、寺田寅彦といった定番から園子温、万城目学、朝井リョウといった旬まっさかりの作家まで、セレクトこそがいのち。若き日の屈折した本への愛をつぶやく開高健「心はさびしき狩人」収録。(キノブックス 本体1600円)
阿川弘之『座談集 文士の好物』(写真中左)
2015年に亡くなった阿川弘之の対談集。オビには「文豪が遺した最後の言葉。」とあります。沢木耕太郎、斎藤孝、向田邦子、井上ひさし等との対談とともに開高健との「ああ好食大論争」を収録。おこなわれたのは1972年、41歳の開高健が10歳年上の阿川“大尉”あいてに食の経験と知識を大展開しています。(新潮社 本体1800円)
三浦英之『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』(写真左)
2015年第13回開高健ノンフィクション賞受賞作品。冒頭の、「友よ、君を何と呼べばいい」と始まる建国大学一期生の手紙にいきなり心をつかまれます。開学からわずか8年しか存在し得ず、満州国の崩壊とともに歴史の闇へと姿を消した「最高学府」は、日本、中国、朝鮮、モンゴル、ロシアの各民族から選び抜かれた当時のスーパーエリートたちの集う場所。各地に散った卒業生たちの「戦後」を現地取材した、読みごたえ充分のルポルタージュ。(集英社 本体1700円)
語り手◆東条忠義(CMプランナー・ディレクター 元サン・アド 1938-2007)◆
●4階まで聞こえた大音声
私が開高さんに初めてお目にかかったのは、昭和四十年だったと思うんです。亡くなられたあとに出した追悼号にもそのへんの経緯やらを「バカ者ありき」というタイトルで書いたんですが、なぜそんなタイトルになったかと申しますと、当時私はサン・アドの四階の事務所のほうにいて、ある日突然、応接室やら社長室のある二階から、「バカもの!」というとんでもなくでっかい大音声が聞こえてきた。このときの開高さんの大きな怒鳴り声が忘れられず、タイトルとして使わせていただいたわけです。
で、そのとき、いったい何事が起きたんだろうと二階に下りていったら、ベトナムから帰ってきたばかりの開高”大音声”先生が応接室に怒りをあらわにした顔で座っておられる。それで、どうして先生が「バカもの!」と叫ばれたのか、聞いてみると実はこういうことだったんです。
●「それはダミーです」
ベトナムから帰国したあとまず、当時日比谷にあった朝日新聞社に顔を出し、それから初めてサン・アドのオフィスに顔を出した。一応オフィスのなかにスタジオもあって、サントリーの商品の撮影などは主にそのスタジオでやっていたので、撮影に使ったウィスキーのボトルなども置いてあったんです。で、そのスタジオに置いてあった高級ウィスキーのボトルに先生はさっそく手を伸ばし、グラスに注いで一杯やったあと、「うーん、さすがに上物はいいな」と満足げに言って、ソファにひっくり返った途端、そのスタジオの管理をしていた当時の写真部長が、「あっ先生、すいません、それはダミーです」と言ってしまったらしいんです(笑)。
……たぶん先生がそのとき飲んだボトルの中身はトリスで(笑)、撮影用のダミーだった。つまり先生は偽物のウィスキーをそれと知らず飲んだのだけど、久しぶりにベトナムから日本に帰ってきたばかりだったので、それをうまいと思ったのでしょう(笑)。で、言わなきゃいいのに「先生、それはダミーです」と言っちゃったものだからたまらない。先生、怒ってしまって、「黙っとれ、バカもの!」ってもうビル中全体に響き渡るようなものすごく大きな怒鳴り声を上げた。そのあと怒ったままの顔を見たのが、私と開高さんの初めての出会いでした。
(『ごぞんじ開高健 開高健記念会〈紅茶会〉講演集Ⅴ』 東條忠義 「開高健・映像の裏側」より)
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開高健記念会事務局

装幀家・三村淳氏と株式会社・中村活字が、
一字一字鉛棒を組み、一枚一枚、
出雲の手漉き和紙に刷り上げています
(金色は正会員、サポート会員は開高グリーン)